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2013年5月18日 (土)

福島事故の健康への影響についての資料(改訂版)←前の記事でなくこっちを見てください。

[基本テキスト]

「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」

福島事故による放射能汚染の健康影響について述べた一般向けの本で、一番良いと思うものです。特定の立場を押し付けたり、不安(ないしは安心?)をあおるためにデマを飛ばすのではなく、皆が検証可能な情報を提供して各自の判断を助けようとする、著者(田崎晴明 学習院大学教授)のスタンスが良い。私自身も、田崎教授のスタンスを見習ってこの記事を書くよう努めています。

 

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4255006768/ref=cm_sw_r_fa_alp_oicprb1THYQ3A

 

なお、この本は、筆者がpdf版をネットで無料公開しているので、PCで見るだけなら、本を買う必要はありません。

 

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/

 

もっと詳しく知りたい方々には、同著者の次のサイトを参照することを勧めます。

 

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/index.html

 

特に、以下のページには、著書では省略されている重要な情報があります。

 

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/cancerRisk.html#3 

(上記著書の参考文献: 著者の記述を元文献で検証したい人向け)

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsonGround.html

(セシウム134, 137の各々の沈着量と空間線量率の関係)

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/thyroidscreening.html

(小児甲状腺被ばくについて)

 

[地図資料]

福島事故による汚染状況の元データは、以下のサイトにまとまっています。

 

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/index.html

 

世の中に出回っている汚染情報には、とんでもないデマ(虚偽の風説)が結構あります。怪しいと思ったら、上のサイト(およびこの記事で上げた他の情報)と見比べて、自分でチェックしてみるのがよいと思います。

特に重要な基本情報は、次の5つのページにまとまっています。

 

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/6000/5847/24/203_0727.pdf

12/07に完了した、全国のセシウム汚染状況と空間線量率のモニタリング結果)

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6749/24/191_258_0301_18.pdf

(現時点での最新のセシウム汚染状況と空間線量率のモニタリング結果。 2013/03/01付け)

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6213/24/338_0912_18_rev0914.pdf

(ストロンチウム90の測定結果。"別紙5(参考)"参照)

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6030/24/5600_0821.pdf

(プルトニウムの測定結果)
http://fukushima-radioactivity.jp/

(福島県のリアルタイムでの空間線量率データ)

 

[関連情報(1) 医療被ばくとの実効線量比較]

田崎教授の本にはない情報として、各種X線検査1回あたりの実効線量のデータを例示しておきます(東京都中野区の広報資料)。

 

http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/402000/d013318.html#senryo

 

·歯科検査は1回あたり0.0020.01ミリシーベルト

·胸部エックス線検査は1回あたり0.06ミリシーベルト

·乳房エックス線(マンモグラフィ)検査は1回あたり0.2ミリシーベルト

·胃透視検査は1回あたり3ミリシーベルト

·CT検査は1回あたり530ミリシーベルト

 

これらのデータは、単なる目安として受け取って下さい。リンク先にも書いてある通り、体格・部位・検査方法・機材による被ばく量の差がかなりあるためか、参照サイトによってかなり数値が違います。ただ、そうはいっても、実効線量のイメージをつかもうとすると、やはり、医療被ばくとの比較は避けて通れないと思うので、あえて載せました。

 

上のデータを頭に入れていろいろなサイトを見ると、医療被ばくとの比較による印象操作がよく見えてきます。例えば、1ミリシーベルトという値を大きく見せたい人は、胸部エックス線検査との比較を持ち出し、小さく見せたい人は、CT検査との比較を持ち出す。こういうことは、もうやめたほうが良い。逆に、情報を受ける側としては、このような印象操作に引っかからないため、医療被ばくの数値イメージを持っていることが重要なのだと、私は思います。

 

[関連情報(2) チェルノブイリ事故関係]

今後の日本(福島)を考える上で、チェルノブイリ事故との比較は重要である。チェルノブイリ事故の影響の公式資料として、日本学術会議により和訳された国際原子力機関(IAEA)報告書を挙げます。p.35-36にセシウム137の汚染状況が、p.39-40にストロンチウム90およびプルトニウム汚染の地図があります。

 

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kiroku/3-250325.pdf (IAEAチェルノブイリ報告書の和訳)

 

福島事故との直接比較については、英ネイチャー誌の記事を見てください。同じ色のところが、全く同じ沈着量範囲に対応してはいないので要注意。右端の棒グラフが福島事故とチェルノブイリ事故のセシウム137放出量の比較。

 

http://blogs.nature.com/news/files/2012/02/Fukushima-Chernobyl-large.jpg

Captionの和訳) 降下物の比較 福島からの新しいデータは、福島事故によるセシウム137汚染の程度が(場所によっては)チェルノブイリ事故の水準に近づいているが、汚染面積はずっと狭いことを示している。

 

この地図のキャプションでは、チェルノブイリのセシウム汚染の最大値が3,700kBq/m2になっていますが、これは、実際の汚染の最大値がこの値であったという意味ではありませんので、念のため。例えば、下のほうにあるウクライナの汚染地図帳(p.257)には、18500kBq/m21850万ベクレル/平方メートル)以上の汚染地域の存在が示されています。

ヨーロッパ全体の汚染地図は、次のUNEP(国連環境計画)のサイトからもダウンロードできます。

 

http://www.grida.no/graphicslib/detail/radiation-from-chernobyl_7925

 

さらに、福島県HPにある、SafeCastというNPOが作成したヨーロッパの空間線量率データ

 

http://fukushima-radioactivity.jp/world-mapsearch.php

 

も参考になります。これらのデータから、チェルノブイリ事故が福島事故と比べても、如何にすさまじかったかが読み取れます。(念のため付け加えると、福島事故がたいしたことなかったと言おうとしているわけではありません。) 以下、具体的な対比をしてみます。

 

UNEPの地図を見ると、セシウム13740185 kBq/m2沈着した地域がヨーロッパ中に散在していることがわかる。この沈着量は、日本で言えば福島県中通りに相当する(下のリンク先の別紙4, 参考4で、一番濃い青の部分を中心とした範囲です)。

 

 福島県HPでヨーロッパの空間線量率を見ると、例えば、昨年12月ごろの時点で、空間線量率が0.5μSv/h(毎時0.5マイクロシーベルト)を超えている都市がいくつかあることが分かる。例えば、ミュンヘン(ドイツ)で0. 56μSv/h、タンペレ(フィンランド)で0.59μSv/h。これは、今の日本で言うと、福島市・郡山市あたりと同水準(*)。(下のリンク先の別紙1, 参考1で、福島県中通りから茨城県に流れている薄緑の範囲。ただし、測定条件が揃えられていないことから、単純比較はできない可能性があることはご承知おきください。)

 

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6749/24/191_258_0301_18.pdf

13/04時点での最新のセシウム汚染状況と空間線量率のモニタリング結果。再掲)

 

(*)ヨーロッパの空間線量率は、放射性セシウムの崩壊に伴いどんどん下がっているはずなので、チェルノブイリ事故直後には、さらに高かったと考えられます。それを考慮に入れて、ヨーロッパでの空間線量率をチェルノブイリ事故2年後(1988/4)の値に換算した結果を示します。これらの値を見ると、現在福島県中通りで観測されている値より、むしろ高かった可能性がある。

 

測定地点(国)- 2012/12の空間線量率 - 1988/4 の空間線量率()

ドランメン(ノルウェイ)- 0.28μSv/h - 0.6μSv/h

タンペレ(フィンランド)- 0.59μSv/h - 1.4μSv/h

ミュンヘン(ドイツ)- 0.56μSv/h - 1.3μSv/h

ロッテルダム(オランダ)- 0.33μSv/h - 0.7μSv/h

()現在の線量率のうち0.05μSv/hが自然放射線由来で残りが137Cs由来であり、かつ、137Cs55%(in Bq)に相当する134Csが放出されたと仮定した。(http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/Cs137vs134.html参照)

 

 チェルノブイリ事故では、ストロンチウム90およびプルトニウムによる汚染も深刻だったが、福島事故でのこれらの同位体による土壌汚染は、現状、ほぼ無視できる程度にとどまっている。例えば、チェルノブイリ事故では、30m以遠のところまで111kBq/m2以上のストロンチウム90汚染が広がった(IAEA報告書p.39)が、福島事故では、30km圏内のごく一部で数kBq/m2(実際には最大4700Bq/m2 = 4.7kBq/m2)の汚染がみられているのみである(次のリンクの"別紙5(参考)"参照)

 

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6213/24/338_0912_18_rev0914.pdf

(ストロンチウム90の測定結果。再掲)

 

また、プルトニウム239, 240については、チェルノブイリでは、3.7kBq/m23700Bq/m2)以上の汚染地域が30km圏内に広がっている(IAEA報告書p.40)が、福島では、その数百分の1の12Bq/m2および7.5Bq/m2の値が、ピンポイントで見られる程度にとどまっている(次のリンクの"別紙3")

 

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/7000/6030/24/5600_0821.pdf

(プルトニウムの測定結果。再掲)

 

ちなみに、福島でのストロンチウム90が最大4.7kBq/m2、プルトニウムが最大12Bq/m2という値は、チェルノブイリ法(後述)で言えば、強制移住どころか、任意移住保障区域(いわゆる移住の権利ゾーン)の基準にも該当しないレベルです。

チェルノブイリ事故については、以下のサイトの資料(衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書)も参考になります。

 

http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/201110cherno.htm

 

以下、重要なページをピックアップする。

 

http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/cherno17.pdf/$File/cherno17.pdf

(ウクライナの汚染地図帳:大変重いので注意)

http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/cherno16.pdf/$File/cherno16.pdf

(いわゆるチェルノブイリ法の和訳)

 

ついでに、いわゆるチェルノブイリ法の強制移住基準について述べておきたい。和訳は直前のリンクのp.181にあるが、単位を直して少し噛み砕いて書くと、以下の通りになる。

 

「強制(義務的)退去区域セシウム同位体の土壌汚染濃度が555kBq/m2以上、又はストロンチウム111kBq/m2以上、又はプルトニウム3.7kBq/m2以上で、内部被ばくを加味した年間の予測実効線量が事故前より5ミリシーベルト以上高くなる区域。」

 

ここから、ウクライナの法律での強制移住基準は、セシウム同位体(134, 137)、または他の放射性元素のいずれかによる土壌汚染濃度が基準値を超えており、かつ、年間予測実効線量が5ミリシーベルト以上高いことであることがわかる。つまり、上記のは、各々独立した条件(**)で、この両方が満たされないと基準に適合しないことになる。この点が、日本ではしばしば理解されていないのではないかと思います。

 

(**)なお、セシウム137汚染が基準値555kBq/m2の時の、地上1mでの空間線量率は1.17μSv/hである。これを単純に年間の値に直すと10.2ミリシーベルトになり、セシウム137由来の外部被ばくだけで、実効線量基準5mSv/y2倍になってしまう。実際には、建物の防護効果により、外部被ばく量がこれよりかなり小さくなる(かつ、内部被ばくはそれほど大きくない)ことを見込んでいるのだと思う。


[関連情報(3) 世界保健機関(WHO)報告について]

福島事故による健康被害については、世界保健機関(WHO)が調査を行い、報告書にまとめています。このWHO報告についての、国連HPでのプレスリリースが次のリンクにあります。

 

http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=44248#.UWjocrUWP03

 

この報告についての新聞記事はいくつも出ているが、記事によりかなりニュアンスに差があるので、できるだけプレスリリースに忠実な抄録(完全な和訳ではありません)をまとめてみました。なお、報告書自体(英語)は、無料では見られないようです。

 

(以下、プレスリリースに基づく報告書の抄録)

1)結論として、日本国内外の一般大衆に対する健康リスクは低く、ガン罹患率の上昇度合いは(次に述べる一部の人々を別にすると)検知できないほど低い水準にとどまると予想される。

2)しかし、福島県の最も汚染された地域(#)では、特定のガンにかかるリスクが(事故がなかった場合と比べ)わずかに高くなる。

3)報告書についての、WHO 公衆衛生・環境担当者Maria Neira氏談

人口統計学的要因(年齢・性別)、居住地(原発からの距離)ごとに、特定のがんにかかるリスクを検討した。

最も汚染された地域(#)では、特定のガンにかかるリスクがわずかに高くなるが、福島県内でも、最も汚染された地域以外(##)では、ガン罹患率の上昇は検知できないほど小さいと予測される。

上記の最も汚染された地域での小児(###)に対する、健康影響の見積もりは、次の通り。

 女児の甲状腺がんの生涯罹患率が事故前の1.7倍。

 男児の白血病の生涯罹患率が、同じく1.07倍。

 女児の乳がんの生涯罹患率が、同じく1.06倍。

また、福島第一原発の緊急作業員の1/3において、ガンのリスクが高まった。

この報告はまた、今後数十年にわたって、これらの健康リスクの高い人々に対する健診および必要な医療サービスの提供を続けることが必要であると、強調した。

(抄録終わり。引き続き、下記リンクの新聞記事から補足した情報)

#)浪江町など。

##)具体的には、福島市、郡山市など。

###)具体的には、浪江町の1歳児をモデルケースとしているようだ。

 http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130301ddm012040084000c.html

 [関連情報(4) 原発事故に対する他国政府の対応について]

 資料として、「スウェーデンは放射能から国民をどのように守っているのか?」を紹介します。チェルノブイリ事故後にスウェーデン政府がとった対策、および、再度事故があった場合にとるべき対策のまとめです。これは、スウェーデン農業大学+防衛研究所+食品庁+農業庁+放射線安全庁による共同刊行物「プロジェクト・どのように放射能汚染から食料を守るか」(1997~2000年)の和訳であり、その意味で、出所がはっきりした資料です。

 実用的な意味では、この本を読んでもあまり得るところはないかもしれない。しかし、この本から、チェルノブイリ後に、スウェーデン政府が何を考え、何をして何をしなかったか、今後事故が起こったら何をすべきと考えているかがかなりはっきり分かる。この様な情報は、スウェーデン中部のセシウム137汚染(3~200 kBq/m2 :注)が、福島県会津地方、いわき市の大部分、および近県の汚染と同程度であることから、特に有用であると思います。

従って、放射能汚染に対する行政対応などについて考えたい(考えている)人は、読むとよいと思います。実際、市民への情報伝達のむずかしさ(スウェーデン政府の苦労)について述べた部分などは、日本の現状に対しても示唆的な内容であると思います。

注)本書見開き地図及びp.106による。なお、この値を事故から2年後時点の放射性セシウム由来ガンマ線の空間線量率に換算すると、0.010.7μSv/hになる(高さ1m, セシウム134/137放出量比(Bq)が0.55と仮定した)。さらに、年間の外部被ばく等価線量に換算(日本基準)すると、年間0.053.5mSvになる。

ほか、本書からわかる具体的情報をいくつか示す。

p.104 放射性セシウムで汚染された場所で、埃を吸入することにより生じる被ばくリスクについて、「ほとんどない」と明確に否定している。


p.147 「家庭における汚染対策」として、放射性セシウムを(全部ではないが)抜くことができる調理法について記載している(これは役に立つかも)。ただし、サプリメント(ペクチンなど)による放射性セシウムの健康影響の低減については、全く触れていない。実質的にこのようなサプリメントの有効性を否定している(明らかに、少なくとも国民に奨励すべきものだとは考えていない)といってよいと思う。


p.113 新たな事故が起きた場合に適用される食品中のセシウム137の基準値の一例。ベビーフードで400Bq/kg (ちなみに、日本では、事故直後の暫定基準が200Bq/kg, 現行基準が50Bq/kg)。


http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AF%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E6%B1%9A%E6%9F%93%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A9%E3%81%86%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%92%E5%AE%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E9%AB%98%E8%A6%8B-%E5%B9%B8%E5%AD%90/dp/4772610545/ref=cm_cr_pr_product_to

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